去年のことだ。
会社の帰り道、道端に捨てられているラジカセをみかけた。
ラジカセ。ラジオとカセットテープレコーダー(プレイヤーの場合もあるみたいだ)が一体化しAV機器だ。
こういうものは、最近は有料で回収してもらうことになっている。道端に捨ててあるのは、単に公共心がないというだけでなく、ごみを捨てる際に払うお金がないのかもしれない。
不景気、不景気と「口を開ければ」不景気というTVの中の人たち。
その割に深夜まで放送は行われている。昔、どこかで読んだのだが、外国では放送休止時間があるそうだ。
そう言えば、都市伝説なのだが、大塩平八郎の亡霊が現れて、札をばらまいて歩いているらしい。
大塩平八郎といえば、造幣局のあたりに石碑が立っているのをみかけたことがある。
たしか、江戸幕府の悪政に乱を起こしたはずだ。
この国の政治は迷走している。
だから再び彼が甦って、輪転機をフル稼働させているのかもしれない。
「都市伝説なんてもの、信じてるのかよ」
友人とドライブに行った際に、話題に困ってその話をしたら、彼は怒ったようにそう言った。
彼は金融関係の仕事をしていたはずだ。まずかったかな、と思い、
「いや、そんなことはないよ。単なる噂話さ」
彼は無言でアクセルを深く踏み込んだようだ。
エンジン音が一瞬大きくなって、車が加速した。
どんどん、前の車を追い抜いていく。
そんなに不適切な話題だっただろうか?
みるみるうちに、ほとんどすべての車を追い越してしまい、どうみても速度違反の領域に突入していた。
「ちょっと、スピードを落としたほうが・・・」
彼の方を見ると、目が虚ろだった。
「ちょっと!!」
料金所がもうすぐ目の前だ。それでも速度は変わらない。
目の前が真っ暗になった。
比喩ではなく、事実として。
クッションのようなものにぶつかったような感じで車は止まった。
エアーバッグが開いて、その中に埋もれあたふたとしたが、しばらくして、外部から助け出され、車の外に出た。
見るとなにか紙の山に車は突っ込んで止まっていた。
周囲の人が沢山で群がっていて、よく分からなかったが、どうもお札の山のようだ。
なんで、こんなところに・・・。
まさか・・・。
友人はどうしただろうか、と探してみたが見当たらない。
パトカーと救急車がやってきて、わたしは救急車にのせられ病院に運ばれた。
事情聴取を受けたとき、警察の人に友人はどうなったかきいてみると、言葉を濁して去っていってしまった。
それ以来、その友人には会っていない。
景気はあの事故を境に急回復して、今は誰も「不景気、不景気」と不景気なことをいう人もいなくなった。
友人はどこに消えたのだろうか。
今もたまに新しい札を見る度に思う。
大塩平八郎の肖像画の最高額の紙幣を見ると。
おわり
会社の帰り道、道端に捨てられているラジカセをみかけた。
ラジカセ。ラジオとカセットテープレコーダー(プレイヤーの場合もあるみたいだ)が一体化しAV機器だ。
こういうものは、最近は有料で回収してもらうことになっている。道端に捨ててあるのは、単に公共心がないというだけでなく、ごみを捨てる際に払うお金がないのかもしれない。
不景気、不景気と「口を開ければ」不景気というTVの中の人たち。
その割に深夜まで放送は行われている。昔、どこかで読んだのだが、外国では放送休止時間があるそうだ。
そう言えば、都市伝説なのだが、大塩平八郎の亡霊が現れて、札をばらまいて歩いているらしい。
大塩平八郎といえば、造幣局のあたりに石碑が立っているのをみかけたことがある。
たしか、江戸幕府の悪政に乱を起こしたはずだ。
この国の政治は迷走している。
だから再び彼が甦って、輪転機をフル稼働させているのかもしれない。
「都市伝説なんてもの、信じてるのかよ」
友人とドライブに行った際に、話題に困ってその話をしたら、彼は怒ったようにそう言った。
彼は金融関係の仕事をしていたはずだ。まずかったかな、と思い、
「いや、そんなことはないよ。単なる噂話さ」
彼は無言でアクセルを深く踏み込んだようだ。
エンジン音が一瞬大きくなって、車が加速した。
どんどん、前の車を追い抜いていく。
そんなに不適切な話題だっただろうか?
みるみるうちに、ほとんどすべての車を追い越してしまい、どうみても速度違反の領域に突入していた。
「ちょっと、スピードを落としたほうが・・・」
彼の方を見ると、目が虚ろだった。
「ちょっと!!」
料金所がもうすぐ目の前だ。それでも速度は変わらない。
目の前が真っ暗になった。
比喩ではなく、事実として。
クッションのようなものにぶつかったような感じで車は止まった。
エアーバッグが開いて、その中に埋もれあたふたとしたが、しばらくして、外部から助け出され、車の外に出た。
見るとなにか紙の山に車は突っ込んで止まっていた。
周囲の人が沢山で群がっていて、よく分からなかったが、どうもお札の山のようだ。
なんで、こんなところに・・・。
まさか・・・。
友人はどうしただろうか、と探してみたが見当たらない。
パトカーと救急車がやってきて、わたしは救急車にのせられ病院に運ばれた。
事情聴取を受けたとき、警察の人に友人はどうなったかきいてみると、言葉を濁して去っていってしまった。
それ以来、その友人には会っていない。
景気はあの事故を境に急回復して、今は誰も「不景気、不景気」と不景気なことをいう人もいなくなった。
友人はどこに消えたのだろうか。
今もたまに新しい札を見る度に思う。
大塩平八郎の肖像画の最高額の紙幣を見ると。
おわり
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